Subido por Kumiko Nakagawa

【再】EYTT卒業レポート (近藤)

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EYTT 卒業レポート
ヨガレッスンの定義について
~ヨガとストレッチの違い~
近藤知子
1.契機と論点
これまでいくつかのヨガレッスンと銘打ったクラスを受講した中で、
「これはヨガのレッ
スンではなく単なるストレッチではないのか」と何度か違和感を覚えたことがあった。
そこで、ヨガとストレッチの違いとは何かを定義しようしたが非常に曖昧であり、書籍や
サイトに答えを求めて巡ったものの、確固たる定義を持つには至らず漠然としたまま放置
していた。
しかし、自身が今後ヨガのレッスンを受け持つことを意識するようになりレッスンの内
容を考えるうえで放置できない課題であると思い、改めて考察することとした。
両者を比較し、どんな要素があればヨガのレッスンと言えるのかを考え、自身が行うレッ
スンのコンセプトを明確にしたい。
2.違和感の原因
ヨガレッスンを受けに行き「これではストレッチだ」と感じた時、私は何をどう感じてい
たのか振り返ってみた。
その時のレッスンは「お寺ヨガ」というタイトルで、ヨガ未経験者から受講可能、お寺の
建物の一角をお借りして周囲の雰囲気を味わいながらポーズをとるというコンセプトであ
った。未経験者も対象にしていたため、準備運動の時間を長めにとりストレッチを行った。
アーサナは易しいものを一つ一つ解説しながらゆっくり進められ、キープ時間は短かった。
所要時間の60~70分は瞬く間に過ぎ去り、準備運動と同じくらいの強度のアーサナが
数種類続き、期待していた強度高めのアーサナは1つも出てくることなくそのままレッス
ンは終了した。
端的に言って物足りなかったのである。準備運動をして終わってしまったような気持ち
になった。
その頃の私は体を動かすことの気持ちよさに徐々に目覚め、新しいアーサナをとること
が楽しみで様々なレッスンに参加していた。パワーヨガ系の有酸素運動的要素を求めてヨ
ガに取り組んでいたため、お寺ヨガのコンセプトを読んで参加したにも関わらずレッスン
内容と自身の期待した内容の差異に大いに衝撃を受け、不満を抱いたのである。
また、某ホットヨガスタジオの「ハタヨガ初級」を受けた際も似たような不満を抱いた。
温度と湿度が高いため大量に発汗したものの、座位や横たわって行うアーサナを長めにキ
ープし続けるという内容だったため、こちらも準備運動で終わったという印象でスタジオ
を後にした。
この2つの出来事は、単なる私の認識不足であり、レッスンの主旨をよく理解していなか
ったことが原因であるが、同様の感想を自身のレッスンに来てくれる人に持たれるのは怖
いと思ったのである。仮に強度低めのアーサナのみでレッスンを構成した時に「これはスト
レッチとどう違うのですか」と問われたらどう答えればいいのか。ヨガの気持ちよさを伝え
たくてレッスンを行うのに失望されるのではないか。
では易しいアーサナのみで構成されたレッスンはヨガではないのか、というとそうでは
ない。
例えば陰ヨガのレッスンは運動量低めであるが、初めて受けたときに「こんなヨガもある
のか」と素直に受け入れることができ、その後も自身が昂っていると感じる時には好んで練
習に取り入れている。
何故陰ヨガのレッスンはストレッチだと思わなかったのか。
内容はストレッチと言っても過言ではないのに、何故あんなに素直にヨガだと思えたの
だろうか。そもそもストレッチとヨガはどこが違うのだろうか。共通点と相違点を整理して
みる。
3.現代におけるヨガについて
ヨガレッスンとは何かを考えるうえで、ヨガの定義を以下のようにまとめた。
・ヨガとは、三昧(サマーディ)に至るための修行法である。
・坐法(アーサナ)はその一環である。
・坐法(アーサナ)はポーズをとることで意識を体の内側に向け、瞑想の準備となる。
修行法であるヨガには様々な流派がある。代表的なものとして、9 つを挙げる。
・精神面のヨガ:ラジャヨガ
・ポーズと呼吸を中心としたヨガ:ハタヨガ
・叡智道のヨガ:ジニャーナヨガ、ジュニアナヨガ
・奉仕・行動のヨガ:カルマヨガ
・マントラ中心のヨガ:マントラヨガ
・献身・信仰・祈りのヨガ:バクティ―ヨガ
・行事のヨガ・心身浄化のヨガ:クリヤーヨガ
・チャクラの活性・潜在能力の解放:クンダリーニヨガ
以上のように各流派によってアプローチするポイントは違うが、最終的にサマーディに至
るという目的は一緒である。
昨今展開されている多くのヨガスクール、スタジオ、レッスンのコンセプトの主流となっ
ているのはハタヨガから派生した、アーサナを行うエクササイズ要素の強い健康法として
のヨガである。
ヨガ=運動というイメージが定着しているといえる。
本文においては現代日本にて普及している運動としてのヨガについて、即ちアーサナを
行うレッスンについて述べていく。
検索すると様々な種類のレッスンがあることがわかる。
ハタヨガ・アシュタンガヨガ・シヴァナンダヨガ・アイアンガーヨガ等流派によるレッスン
決められたアーサナを順番通りに行うスタイルや、体の使い方を確認しながら個々のアー
サナの練習をするスタイルがある。
パワーヨガ・陰ヨガ等 内容がタイトルになっているレッスン
動的、静的など取り組むアーサナの傾向を決めて行う
ホットヨガ・パークヨガ等 ヨガを行う環境をタイトルにしたレッスン
タイトル通りの環境の中でヨガを行う
骨盤ヨガ・顔ヨガ・後屈ヨガ等 アプローチしたい部位に働きかけるアーサナを組み合わせ
て行うレッスン
シニアヨガ・妊婦ヨガ・キッズヨガ等 対象者別に行うレッスン
呼吸法・瞑想・ヨガ哲学・マントラ・キルタン等ヨガのアーサナ以外を学ぶワークショップ
短時間検索しただけで上記のように分類でき、それらを組み合わせることで更に多岐に
亘るレッスンが開催されている。非常に自由度が高く、検索結果を見ているだけでも「ヨガ
とは何か」と迷子になりそうになる。
これだけ種類があるということは、人によってヨガに対して期待する効果が様々である
ことが窺える。受ける側は「どんな場所でどんなヨガをやりたいか」という目的を明確に持
っているため開催する側も明確なコンセプトが無ければ選んでもらえない。
コンセプトは重要である。私が陰ヨガを素直に受け入れられたのは、コンセプトをあらか
じめ理解し納得して受けたからだというのは先に述べた通りである。
しかし、あらかじめコンセプトは理解していたのにお寺ヨガも、ホットヨガのハタヨガ初
級も何故違和感があったのだろうか。ストレッチの時間が長かったから、期待していた体の
動かし方が出来なかったから不満だったのだろうか。
ヨガレッスンとしてクラスを成立させるためには何が必要なのか。
4.ストレッチ体験
ヨガとストレッチを比較するにあたり、いわゆるストレッチ教室のようなところではど
のようなことをしているのか実際に受けてみなければわからないと考え、ストレッチを受
けに行ってみた。
都内のストレッチ教室で検索したところ、ストレッチ教室にも様々なタイプがあった。
以下 3 つに大別した。
整体系:整体のように不調部分を伝え、トレーナーに筋肉をほぐしてもらう
ジム系:器具を使用してほぐす
レッスン系:腰痛改善や肩こり解消等のテーマが設けられ、セルフストレッチまたはアジ
ャストがついて体をほぐす
3 つ目のレッスン系がヨガレッスンに近い形態であると思われる。比較のため 1 つ目の整
体系と 3 つ目のレッスン系のストレッチ教室の体験クラスを行った。
まず、整体系ストレッチの内容は以下の通り。
客一人に対してトレーナーが一人ついて行う。
はじめに、アンケートにほぐしたい箇所や体の不調の部分を記入する。
次にトレーナーの指示に従って前屈や腕を上げ下げするなど体の動きをチェックされる。
寝台に横たわり手技によるチェックを受ける。
アンケート内容と体の状態を踏まえたうえでコース内容を決定する。
各筋肉の働きやどこに作用するかなどの説明を受けながら希望の部位がほぐれるようスト
レッチを受ける。次々と技をかけられるので自分がどういうポーズをとっているかの確認
が困難になってくる。呼吸は吐くタイミングと長さを指示され、頻度は少なめ。
所要時間 60 分で首、腰、足の 3 か所の施術を希望したが、凝り具合により 1 か所のみ重
点的に行い残りは軽く触れる程度で終了した。
凝っている部位を指摘されセルフストレッチの方法や普段の姿勢の注意点をいくつか教
えてもらう。
また、1 回では効果が薄いため続けて通うことを勧められる。
料金は 10 分につき 1000 円であった。全体的に整体と同じである。
施術後の体感は疲労感無し、やや血行が良くなった感あり。劇的な体の変化はなし。
他人の力で筋肉を伸ばせるため自身の体力の消耗なく、自力では伸ばせない域まで伸ばす
ことができることは準備運動やメンテナンスに有効という印象である。
筋肉の収縮によって血行を促し凝りをほぐすことが目的なので、自身で筋肉の動きをコン
トロールすることはない点がヨガとの違いとして挙げられるが、ペアワークとしてレッス
ンにありそうである。
次にレッスン系ストレッチの内容は以下の通り。
某バレエ教室が開催する「ストレッチ体幹クラス」を受講。体の中心(体幹)を鍛えるた
めに内転筋をしっかり使おうというコンセプトの基に構成されていた。
内転筋を鍛えるためには足裏の使い方を見直し、歩き方、歩く時に使う筋肉の意識の仕方を
教えてもらった。
60 分の所要時間の中で
全身のほぐし→下半身のストレッチ→体のバランスチェック→
内転筋を鍛えるストレッチ→歩き方チェック及び練習→クールダウン
という流れであった。
短時間ではあるものの自身の身体のチェックも出来、アプローチしたい箇所を鍛えるた
めに効率よく身体を動かせる内容であり特に鍛えたい箇所がある場合には効果的なレッス
ンだと感じた。
料金は 60 分で 2000 円でレッスンの中でのストレッチは準備運動としての位置付けであ
り料金やクラス構成等ヨガのレッスンに共通するところがある。
5.ヨガとストレッチの違い
上記のように共通点が多いという感想を持ったが、相違点は何があるだろう。
ヨガの特徴的なところがストレッチに当てはまるかどうか列挙してみる。
・呼吸と動きが連動している・・・ストレッチも伸ばす時には息を吐くよう指示される。た
だし、呼吸に合わせて動きを連続させることはあまりない。
・内観を深める・・・伸ばされている筋肉には意識が向く
・アーサナを深めるためにある程度の負荷をかける・・・これはトレーニングになるのでス
トレッチには当てはまらない
・練習を続けること・・・ストレッチでも筋肉を強化させるためには継続が必要
・シャバーサナ・・・クールダウンの時間はあるが、力や意識を解放して体を休めることは
ストレッチには無い
以上を比較してみると、多少の違いはあるもののやはり共通する部分が多いと感じる。
ではそれぞれの目的はどうであろうか。
ヨガはサマーディに至ること、ストレッチは筋肉を伸縮させることである。
しかし、スポーツジムにおいてもヨガのクラスが開催されていることから現在ヨガを行
っている人の目的の多くは体を動かすこと、運動としての位置付けであり、サマーディを目
指している人はどのくらいいるのか疑問が湧いてくる。少なくないとは思うが、私が本文に
おいて考察するのは運動的要素を主としたレッスンについてであるためここでは割愛する。
すると結論としてはヨガとストレッチに大きく異なる点はないということになる。
そもそもヨガかストレッチかと明確に定義する必要がないのではないかという気持ちに
なってきたが、私がやりたいレッスンは何なのだろうか。
6.ヨガレッスンに求められているもの
ヨガを行っている人の目的は千差万別であり、それは 3 章で述べたようにヨガクラスの
種類が多岐に亘っていることからも明らかである。
私自身がレッスンを選ぶ時の基準は何だっただろうか。
私がヨガを始めたきっかけは運動不足解消のためである。続けている理由は出来るアー
サナが増えることが楽しく、もっと自分の身体をコントロールできるようになりたいから
である。最終的には無意識でもアーサナを行えるようになり、意識を自在に手放せるように
なりたい。しかし当面のレッスンに求めていることはアーサナの練習である。
自身がレッスンを行うならばそれを軸として方向性を決めればよいのではないだろうか。
アーサナの見本を目の前で見る、苦手なアーサナのやり方を伝える、アーサナが出来るよ
うになるための体の使い方を伝える、アーサナの練習できる場を作りたい。
その軸が明確であればストレッチの時間が多少長くなってもレッスンの目的を見失わな
いのではないだろうか。
7.ヨガレッスンとは
ヨガレッスンを受けてストレッチと似ているという感想を持つのは決して不思議ではな
いことのようである。
大事なのはその時間が何のための時間なのかを明確にすることである。
私が自身のレッスンに於いて伝えたいことは、第 1 に体と言葉によるアーサナの具体的
な説明、第 2 に呼吸に合わせた体の使い方、動かし方、第 3 に自分をコントロールするこ
との面白さ、そして「今 何を行っているか」の説明である。
「具体的に伝える」ということを大事にし、アーサナの練習のモチベーションが上がるレ
ッスンが出来れば幸いと思う次第である。
以上
(5337 文字)
参考文献
ヨガがまるごとわかる本 Yogini 編集部(著)
YOGA ポーズ大全
成美堂出版
参考サイト
EngawaYoga
http://engawayoga.com/
日本ヨガ連盟 https://www.npo-yoga.com/
ストアカ
https://www.street-academy.com/
Dr.ストレッチ https://doctorstretch.com/
キャストファシルバレエ http://cestfacileballet.tokyo/class.html
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